ロビン参戦記念、「黄金の太陽」の魅力と”魅力”
ロビン、スマブラ参戦!
大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL参戦おめでとうございます!アシストフィギュアとしてですが…。
ロビン君はスマブラXではただひたすら横に黄色い手を発射してファイターを押し出していく地味な妨害キャラだったのですが、映像を見た限り、今作ではちゃんと対戦相手を殴ったり掴んだりして攻撃してくれるようです。
別に原作では敵をあの黄色い手で殴ったり掴んだりはしてませんけどね。まだネテロ会長の方が黄色い手で人を殴ってます。
ちなみに一応黄金の太陽を知らない方に説明しておきますと、あの手は主に謎解きで遠くにある岩を押したり、持ち上げたりするときに使います。大型特殊免許と同じくらい便利ですね。
そんなロビン君ですが、この度参戦が決定しましたので、折角ですから「アシストフィギュアで来たんだからどうせDLCで追加はされないんだろ…」と不貞腐れているであろう黄金の太陽好きの方々に代わりこのゲームの魅力を紹介していけたらなと思います。
黄金の太陽の魅力
黄金の太陽は、最近はマリオのスポーツゲーばかり作っているキャメロットが開発したRPGゲームです。
キャメロット公式サイトの作品紹介ページを見ると、本当に大量のマリオテニスとマリオゴルフが並んでいます。一つのシリーズだけ延々と作り続けるのは中小メーカーにはよくあることですが、それにしても凄い。しかし全体のクオリティは安定しています。
他に気になる点はどこのゲオに行っても5個くらい在庫がある「ビヨンド・ザ・ビヨンド」とやたらファミ通のクロスレビューで殿堂入りしたことを推してくるくらいで、かなり実績のあるメーカーであることが伝わってきますね。任天堂からの信頼を感じる。
話が逸れましたが、そんなキャメロットがコストをかけ過ぎて経営がヤバかったというほど力を入れたタイトルである「黄金の太陽」は、GBA初期のタイトルにも関わらず、GBA最高峰と言っても過言ではないグラフィックを誇っています。
小学生だった当時は普通にCGだと思ってたほど静止画でも非常に綺麗ですが、実際にプレイしてみると更に凄い。町にいる人物はみんなちゃんと動いていて、その辺を歩き回っていたり無意味にスクワットしていたりします。グラフィックがリアルになってくると棒立ちのNPCは不自然になってしまうので、その辺を上手く緩和しているのですが、かかっている労力を考えると本当に”ヤバかった”んだろうなと想像できてしまいます…。風景なんかもかなり細かいところまでアンチエイリアスしてる。
戦闘中のグラフィックに至ってはGBAどころか他の機種のRPG含めてもトップレベルなんじゃないでしょうか。独特のエッジの効いた効果音がズギャンズギャンいいながら、ビカビカのエフェクトが炸裂する光景はこのゲーム以外ではなかなかお目にかかれない派手さでとても気持ちいいです。演出の凝り具合は”光と音のRPG”という言葉を彷彿とさせます。
そして敵を倒すと、人間だろうがクモだろうがキノコだろうが「ピギャー」と悲鳴を上げて消えていきます。IQ低い感じが最高ですね。RPGの戦闘は気持ち良けりゃそれでいい。
また、どうやらこのゲーム、ファミコンにおける「ラグランジュポイント」のような感じで、標準の音源とは別の独自に開発した音源を積んでいるらしく、いかにもな電子音ではなく、透明感のある上品な音になっています。
BGMはテイルズシリーズで有名な桜庭統氏が担当しています。氏はマイナーゲーで本領を発揮すると揶揄されることもありますが、多分1/3くらいはこのゲームの影響だと思います。あとは「バテンカイトス」とか「ヴァルキリープロファイル」とか。
他にもエナジー(他のRPGでいう所の魔法)を使った絶妙な難易度の謎解きや、ジンというシステムによる戦闘の面白さなどの魅力があるのですが説明が難しいので割愛。ジン周りはFF8のジャンクションシステムをマイルドにしつつ、バランスを整えて完成させた感じがして大好きです。
黄金の太陽の”魅力”
黄金の太陽が真っ当に出来の良いRPGであることはなんとなく伝わったと思うのですが、未だにロビン参戦が望まれるほど愛されているのには更に理由があります。それがテキストです。このゲームのテキストやシナリオは、社長である高橋宏之氏自らが手掛けているらしく、中々に”魅力”があります。
主人公の父親が倒れているのを見た、主人公の幼馴染によるセリフです。澄ました表情と、「あれは お前の父さん。」と変な空白があるのがポイントです。
口調は丁寧なのにわざわざ「ナイス」と砕けた感じの言葉を選んだせいで、日本に来たばかりの外国人留学生みたいになってます。多分実際外国人ですが。
まず、単純に変なセリフを挙げてみましたが、文章の雰囲気は割と全編こんな感じです。テキストがおかしいゲームとしては、敵のセリフが完全に狂っていてスタッフの頭が心配になる「セントエルモスの奇跡」や、逆に酔っぱらった平和なオッサンが適当に書いたんだろうな…といった感じの「ラブクエスト」なんかがありますが、それらと比べると、狙ってもふざけてもいないのに滲み出てくる何かがあり、素直にニヤニヤできるテイストになっています。
意味のない選択肢はRPGあるあるですが、これほど意味のない選択肢は珍しいでしょう。なお、このオウム返しも頻発します。
論理的には完全に正しい会話ですが、ここまで見事なオウム返しは今どきペッパー君でもしません。ついでに前の写真の選択肢で「はい」を選んでからここまで、Aボタン2回です。マジかよ。
ちなみに、この顔グラの可愛いアホな青髪の女の子は語尾に「~ですわ」を付けるお嬢様キャラで、なんとなく髪色からも分かる通り清楚系でもあります。可愛い。
こんな強キャラ感溢れるセリフを吐くこともありますが。
これらの文章は"高橋語"と呼ばれ、ネットのごく一部で今も使用されていたりします。こういう文化は、普通にプレイしていたら欠点にしか成り得ない特徴も、茶化すことで魅力に変えてしまうインターネットの良さが表れていると思います。悪い部分でもあります。
他には、シナリオも部分部分を見れば所謂普通のおつかいRPGといった感じなんですが、全体を通して見てみると、正直なところ取っ散らかった印象を受けます。黄金の太陽は2部作なんですが、1作目では「灯台の火を灯させないために」旅をするのが、2作目では逆に「灯台の火を灯すために」旅をすることになるので、1作目の主人公の努力が完全に無駄になる「アークザラッド」的シナリオに。奇しくも”光と音のRPG”から伏線回収できました。
しかしながら設定自体は割と珍しい四大元素をベースとした壮大な世界観となっており、世界規模の事件が起こったりするのでワクワク感はあります。
え、3作目?「マリオゴルフ GBAツアー」のことでしょうか。「黄金の太陽」と同じエンジンを使っており、見た目やUI、操作性から音楽まで似ています。本当にどうでもいいですがSwitchの「Golf Story」は間違いなくこのゲームの影響を受けているでしょう。個人的にはちょっと気になってます。
終わりに
という訳で、一筋縄ではいかない名作、黄金の太陽の話でした。大分話がいろんな方向に行ってしまった感はありましたが…。僕も人のことは言えませんね。
美点であるグラフィックや音楽も流石に現在では見劣りしますが、最新ハードでは出せない独特かつ唯一無二の魅力が存在します。謎解きや戦闘システムも、スタンダードながら今プレイしても目新しさを感じることが出来ると思います。
また、本来なら汚点になりうるテキストやシナリオの出来も、インターネットの文脈を踏まえて見てみると、これはこれで味があるんじゃないでしょうか。
キャメロットはかつて質問コーナーで「1作必中という無謀コンセプトでゲーム製作をしています。つまりヒットしないと会社は厳しいということです。」と語っており、3作目がコケてしまった今、4作目が出る可能性は低いと言わざるを得ませんが、ぜひ出して欲しいですね。お願いします。